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アフターコロナの飲食店を襲う次なる経営課題とは?

アフターコロナの飲食店を襲う次なる経営課題とは?

 皆さんこんにちは、飲食店コンサルティング会社 株式会社ス リーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

 全国で3回目の緊急事態宣言が発令され、飲食店は休業や営業自粛を余儀なくされる等、まだまだ厳しい状況が続いています。長引くコロナ禍は飲食店の経営者の皆さんにとって本当に大変な 状況ですが、飲食店で働く社員、アルバイトの方々にとっても 大きな影響を与えています。

 飲食店などの調査を行う株式会社シンクロ・フードが2021 年3月に503名に対して行った調査データによると47%以上の 飲食店が「正社員、またはアルバイトの雇用が減った」と回答 しています。実際に多くの大学生などが飲食店の休業や時短要 請で働く場所が無くなりバイト収入が激減、生活に困窮する学 生が増えてきているという問題も起きています。

 コロナ前は「人材不足が最大の経営課題」と言われていた飲 食業界ですが、コロナ禍によって飲食業界の人材不足問題は無 くなったのか?アフターコロナにおいては、飲食業界にはどんな経営課題が待ち受けているのかを考えていきたいと思います。

 

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コロナ前の飲食業界の人材状況について

 コロナ禍前である2019年7月に帝国データバンクが実施した人材不足に対 する企業のアンケート調査によると、非正社員だと飲食企業の80%、正社員 では飲食企業の60%以上の企業が「人材が不足している」と回答しています。 農林水産省が行った調査においても、飲食店・宿泊業の欠員率は全産業と比 べて2倍以上高いという状況でした。

 このようなデータからも分かるように飲食業界はコロナ禍前は人材不足深 刻化の“真っ只中”であり、現在はコロナ禍によって一時的に「人材不足」 という経営課題が忘れられているに過ぎません。

 私はアフターコロナにおいてはこの飲食業界の人材不足という経営課題が さらに大きくなり「超人材不足」となって戻ってくると考えています。

 

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アフターコロナでおとずれる飲食業界の「超人材不足」

 日本農業新聞が今年2月に発表したデータによるとコロナ禍の業績不振によ り、上場外食企業の閉店数は3,000店舗、早期退職者は1,000人を超えた事 が分かりました。こうした会社都合により飲食業界を離れざるを得ない人が 増える一方で、残念ながら「これから飲食業界で働くのは不安なので退職し たい」という理由で自ら外食産業を離れる人も増え続けているのが実情です。

 今でこそコロナ禍によって飲食業界は縮小していますが、今後コロナ禍が 終息した時には、市場から成長性が求められる上場外食企業を中心に出店攻 勢をかけてくる企業が出てきます。業種としては、まず最初に飲酒では無く、食事を主体とした非アルコール業態を展開する飲食企業から出店攻勢が強くなります。理由としては、非アルコール業態はコロナ禍においても居酒屋等 のアルコール業態よりもコロナ禍の影響が少なく、業績回復が早い為です。

 こうした上場非アルコール企業は、コロナ禍で撤退したアルコール業態の 居抜き店舗などを活用し一気に成長性を加速していく流れとなり、一度リ リースしてしまった人材を再確保する動きが出てくるため、ここで熾烈な「アフターコロナの人材獲得合戦第一波」が始まります。

 その後、ワクチン接種が進みコロナ禍が終息に向かうにつれて経済活動が 活発化に伴い居酒屋等のアルコール業態も追随して出店戦略を進める事で 「アフターコロナの人材獲得合戦第二波」が始まります。こうした人材獲得 合戦の中で「人が採用できる企業」と「人が採用できない企業」という新規 採用の2極化が進み、業績不振だけではなく「人材不足倒産」が多発するよ うな事態も予想されます。さらに、こうした傾向は新規採用のみならず、既 存スタッフにおいてもより働きやすい企業に転職する等の動きが活発化し 「定着率が高い企業」と「定着率が低い企業」という定着率の2極化も加速していく事になります。

  飲食業界はそもそも「人依存度」が高い業種です。ここで少し人材不足が 飲食店に与えるコスト影響に関してお話をさせて頂きます。

 

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人材不足が飲食店に与える影響

人材不足が飲食店に与える影響

 例えば月商500万円の飲食店だとした場合、売上原価(料理やドリンクの 食材費等)160万円(32%)、人件費160 万円(32%)、賃料75万円 (15%)、光熱水費25万円(5%)、販売促進費13万円(3%)、その他 経費25万円(5%)で仮に営業利益が43万円(9%)だとします。もちろん 業態や立地によって数値は大きく変わりますので、あくまでも目安とお考え下さい。

 このお店の社員さんとアルバイトさんが突然「辞めたい」と退職を申し 出るとどうなるのか。お店の経営者はまずは知り合いやお店のアルバイト さんに社員入社の声掛けをします。これを一般的にリファラル採用(紹介 採用)と言います。しかし、リファラル採用が難しい場合は求人広告等を 利用する事になります。飲食店が社員1人を採用する為にどれ位のコスト がかかるのか?株式会社マイナビ「ベースアップに関する実態調査 (2019年5⽉調査)」によると、飲食店企業の中途採用1名あたりの求 人費は約45万円となっています。アルバイトの1名の採用単価は約5万円 となっています。(筆者調べ)

 つまりこのお店では営業利益43万円のビジネスモデルでしたが、社員 とアルバイトが1名ずつ退職した事で求人広告費が50万円かかる事にな り7万円の赤字になってしまいます。さらにアルバイトスタッフ等は採用 した途端に即戦力になるかというとそうではありません。一般的には40 時間程度は研修期間として重複シフトを組まざるを得ない為、時給換算で 4~5万円の教育コストがプラスにかかる事になるのです。

 他にも人員不足は商品や接客レベルが急激に低下し、お客様の満足度が 低下するといった影響も懸念されます。飲食店を継続的に繁盛させていく 為にはコスト、お客様満足の双方においても「人材の安定」が何よりも重要なのです。

 今後、コロナ禍前より大きな人材不足に見舞われる飲食業界、こうした 中でスタッフの離職を防ぎ、人が働きたくなるような飲食企業となる為に は何をするべきかを考えいきたいと思います。

 

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超人材不足時代に備えて飲食店がやるべき事

 アフターコロナでやってくる飲食業界の「超人材不足時代」。こうした 事態に対応する為に今から飲食店がやるべき事は何なのでしょうか?

「非アルコール業態を展開する」

「福利厚生/給与/働き方を見直す」

「省人化を進める」

 確かに上記のような対策はもちろん重要です。しかし私はもう一つ忘れてはならない事があると思っています。それは「経営理念」「経営ビジョン」の再浸透です。

 「なんで今さら経営理念??」と思われる方もおられるかもしれませんが、 コロナ禍のような状況において、働くスタッフにとって先が見えない事への不安はとても大きいものです。

 もちろん経営者の方々自身も3回目の緊急事態宣言を迎えるこの状況下に おいて、自社の理念やビジョンを語るというのは、本当に本当に難しい事で す。しかし、経営者の不安はお店のスタッフにも確実に伝わってしまいます。

 こうした厳しい状況においても、経営者は自社の存在意義やあり方(経営 理念)や、将来に向けてどのような目標で事業活動をしていくのか(経営ビ ジョン)を明確に打ち出していく事が重要です。

 私はよくこれを「船の航海」に例えてご説明をさせて頂きます。経営者は 言わば船長であり、船長は羅針盤(経営理念)を示した上で、船員(スタッ フ)と共に目的地(経営ビジョン)に向かって大海原を航海(店舗営業)を していく事が重要です。「羅針盤が無い」「目的地が分からない」船には誰 も乗りたがらないのです。

 コロナ禍という「大荒れの時代の航海」だからこそ、こうした羅針盤と目 的地=経営理念、経営ビジョンがより重要であると私は考えています。大荒 れの海で羅針盤もなく航海をしたら、すぐに強風に煽られて遭難してしまう でしょう。

 ただ航海にはガソリン(キャッシュ)が必須ですので、長引くコロナ禍で ガソリン(キャッシュ)が少なくなっている企業に関しては、一旦航海を中 止し岩陰に身をひそめる事も必要です。

 

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コロナ禍でも全店過去最高売上を記録した飲食企業

 飲食店がコロナ禍を乗り切る為に少しでもヒントになればと思い、当社のご支援先で5店舗の飲食店を経営するA社の事例をお話させて頂きます。こちらの 企業様はコロナ禍によって最も影響を受けている「繁華街型アルコール業態」です。

 当然ながらコロナ禍によって客数が大幅に減少する中で、A社の社長様 は自社の経営理念、経営ビジョンの見直しを行いました。決してコロナ禍 前に示していた経営理念や経営ビジョンが間違っている訳ではありません が、コロナ禍という飲食企業にとって未曽有の経営危機を迎える中で、改 めて「自分達はなぜ飲食店を経営しているのだろうか?」という原点に立 ち返り、その目的、意味を見つめ直す事から始めたのです。

 当社の相談窓口にもコロナ禍になり「コロナ前に示した経営ビジョンが コロナ禍の現状にそぐわなくなってしまった」というご相談が多くなりま した。これは飲食業に限った事では無いと思います。皆さんの会社はどう でしょうか?

 A社では社長と幹部社員が一緒になって、一から経営理念、経営ビジョ ンを考え直しました。話し合いを通じて新たに定めたのは「食を通して、 この街を豊かにしていく」という大方針。この大方針をベースにあるべき 将来像や行動指針、店舗別のKPIまで細かく設定をしていきました。

 一見シンプルに見える大方針ですが、コロナ禍で街の人たちにとって 「外食」は当たり前の行為では無くなってしまいました。こういう時期だ からこそ、プロの飲食人として「街から必要とされ、街を豊にするお店」 を目指していこうという強い決意を表明したのです。

 そして新たに定めた経営方針を共有する為に、全社員を集めて社長から 熱い想いや、数年先の自分達の目指すべき目的地を伝えた上で、経営理念、 ビジョンについて参加者全員で考えるグループワーク研修を行いました。 最後には一人一人に「これから自らのお店をどうしていきたいか」を発表 してもらいました。

「こういう時期だからこそ来店されたお客様にたくさん感動を与えた い!」

「地域に愛さるお店として、いつでも元気いっぱいでお客様をお迎えした い!」

「すぐに結果は出なくても、毎日少しずつお客様が元気になるような行動 を積み重ねていく!」

 参加者一人一人からは、溢れるように自分達の目標が発表されました。 そして店舗に戻ってからは、その熱い想いを元に各店がチーム一丸となっ て様々な取り組みを即座に行っていきました。

 取り組みの一つの例として、昨年の緊急事態宣言真っ只中にオープンを したお店では、自店のテイクアウトメニューや当日の限定メニュー等を多 い日で1日10回以上のインスタグラムのストーリー機能で発信したり、 時間帯で変わるお店の前の人の流れに合わせて一日何度もお店の前の看板 の内容や、向ける角度等を小まめに変える等、デジタルマーケティングと アナログマーケティング両輪をフル回転させて実行していきました。その 他にもあらゆる取り組みをスピーディーに実行する事で近所のお客様のご 利用が徐々に増えていきました。

 そして来店されたお客様に対しては徹底した感染対策をした上で、コロ ナ禍という状況で来店してくださった事への大きな感謝の気持ちも込めて、 お一人お一人に丁寧な接客を徹底した事で、口コミでお店の評判が広がり 今ではオープン直後と比べて2倍以上ものお客様にご利用頂けるようにな りました。

 この1年間A社の店舗では、コロナ禍の営業方針等をめぐって閉店後の 店内でホールスタッフとキッチンスタッフが泣きながら熱い議論を交わす ような光景も幾度なく見られました。全てのスタッフがコロナという誰も 経験した事の無い危機の中で、自分達の仕事の意味、価値を考え苦しんで いました。

 こうした各店の取り組みの甲斐もあり、コロナ禍にも関わらず全店が過 去最高人数のお客様をお迎えするまでに回復したのです。

 さらにA社では今年4月には初めての新卒採用も実施、さらに来年の新卒 採用に向けた準備も開始しました。世の中では「飲食業界は厳しい」とい うニュースで溢れていますが、A社では自社の経営理念やビジョンをしっ かりと伝えていく事で既にその理念、ビジョンに共感した複数の学生が新卒採用にエントリーしている状況です。

 コロナ禍のような経営危機においては、どうしても緊急性が高い「目先の対策」に気を取られがちですが、本当に今取り組まなければならないの は、緊急性は低いが重要度が高い 「自社のあり方の再認識」なのかもしれません。

 最後になりますが、私はこのコロナ禍という誰も経験した事が無い危機 的状況の中で、日々全力で頑張っておられる飲食店スタッフや、あらゆる 業界の最前線の現場で働く皆様に応援と感謝の気持ちを伝えたいと思います。本当に毎日ありがとうございます。

 本記事が少しでも皆様のご参考になれば幸いです。 最後までお読み頂きありがとうございました。

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