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コロナ禍の9カ月間で42億円の利益を上げるコメダ珈琲の事業戦略

コロナ禍の9カ月間で42億円の利益を上げるコメダ珈琲の事業戦略

 皆さんこんにちは、飲食店コンサルティング会社株式会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

 新型コロナウイルス第3波に伴う緊急事態宣言などの影響で、外食産業は厳しい状況が続いており、アルコールを提供する居酒屋などの休業が繰り返し報じられています。一方、あまり影 響のなさそうなカフェ・喫茶といった非アルコール業態もコロナ禍で大きな打撃を受けています。しかし、この厳しい状況でも、2020年3~11月の9カ月間で42億円もの利益を上げている企業があります。今回はこうした企業の事例から学んでいきたいと思います。

 まず、カフェ・喫茶チェーンで店舗数1位のスターバックスコーヒーと、2位のドトールコーヒーにおける直近の決算を見て いきます。

 

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スタバもドトールも大苦戦

 スターバックスコーヒージャパンの第26期決算公告(19年10 月~20年9月)を確認すると、売上高は1738億1000万円 (前年同期比13.6%減)、営業利益は8億6600万円(同 95.3%減)、純利益に関しては19億円の赤字です。

 一方、ドトールコーヒーなどを展開するドトール・日レスホールディング スの21年2月期第3四半期決算短信(20年3~11月)を確認すると、ドトー ルコーヒーグループセグメントにおける売上高は434億8000万円(同 28.3%減)、営業利益は18億9800万円の赤字(前年同期は41億400万円 の黒字)という状況です。

 スターバックスコーヒーやドトールコーヒーが非アルコール業態にもかか わらず、ここまで売り上げが落ち込んでしまった要因の一つに「出店立地」 が挙げられます。両ブランドは駅前や繁華街に多数の出店をしています。そ のため、緊急事態宣言による休業や、在宅ワークの普及に伴う駅前や繁華街 の流動人口減少に大きな影響を受けています。

 ここで、出店立地の考え方である「昼間(ちゅうかん)人口」と「夜間(や かん)人口」を解説します。

 昼間人口を分かりやすくいうと「その地域に通勤する人と通学する人の合 計」です。一方、夜間人口とは「その地域に住んでいる人の合計」となります。

 一般的に駅前・繁華街立地は昼間人口が多く、住宅街・郊外立地は夜間人 口が多くなります。どちらの割合が多い場所に出店するかで、お店のビジネ スモデルは大きく変わります。

 夜間人口を100とした場合の昼間人口の指数は、昼間人口÷夜間人口 ×100=昼夜間人口比率です。昼夜間人口比率が100を超える立地を私はビ ジネス型(通学型)商圏、逆に100を下回る場合は住宅街型商圏と呼んでいます。

 少し余談になりますが、われわれコンサルタントが飲食店の出店プロ デュースなどのご依頼をいただいた際には、こうした人口データも商圏分析 に活用していきます。

 ここで、商圏分析ついてもう少し詳しく説明します。分かりやすい例とし て東京の「渋谷駅」と、渋谷駅から井の頭線で5分の場所にある「下北沢駅」 を比較してみます。

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渋谷駅と下北沢駅の商圏を比較してみた

 駅前エリアにおけるカフェ・喫茶業態の有効商圏である500メートル圏内 のデータを分析していきます。

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 渋谷駅の夜間人口は4,591人、昼間人口は98,567人ですので、昼夜 間人口比率は2,147となります。昼夜間人口比率は100以上で「ビジネ ス(通学)型商圏」となりますので、渋谷駅はいわば「超ビジネス型商 圏」と言えます。一方で下北沢駅の昼間人口は11,806人、夜間人口は 13,733人ですので、昼夜間人口比率は86となり「住宅街型商圏」と言えます。

 さらに、別の指標を加える事で商圏の特性をより深く知る事ができます。 例えば半径500m圏内の従業者総数(働いている人の数)を事業所数 (会社の数)で割る事で「1社当り従業者数」を求める事ができ、大規模 企業が多いのか、小規模企業が多いのかを知る事ができます。実際に渋谷 駅と下北沢駅を比較してみます。

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 こちらを分析すると渋谷駅半径500m圏内の会社の1社当り従業者数は17 人、一方下北沢駅は6人となるので、渋谷駅の方が下北沢駅より大規模企業 が多いことが分かります。

 さらに、昼間・夜間人口を半径500メートル圏内のカフェ・喫茶店の 店舗数で割ると、カフェ・喫茶1店舗当たりの昼間・夜間人口、つまり 「競合性」の指標を算出できます。

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 渋谷駅はカフェ・喫茶1店舗当たり昼間人口が348人で、下北沢駅は 73人となっています。ビジネスパーソンや通学生をターゲットとしたカ フェ・喫茶業態に関しては、渋谷駅の方が下北沢駅に比べて競合性が低い (マーケットが大きい)と言えます。一方、夜間人口で見ていくと、渋谷 駅のカフェ・喫茶1店舗当たり夜間人口は16人、下北沢駅は85人です。 実際のコンサルティングにおいては、これ以外に現地調査や賃料コスト、 席数等、あらゆるデータを加味してさらに詳細な分析をしますが、あえて 分かりやすく言うと今回のケースでは「下北沢駅周辺500メートル圏内 ではビジネスマンや通学生をターゲットにしたカフェより、地元に住んで いる人をターゲットにした地域密着型カフェの方が良いのではないか?」 という仮説を立てることもできます。

 渋谷と下北沢の例は、あくまでも仮定の話ですが、コロナ禍によって飲 食店の出店における「良い立地」の定義が変わってきています。実際、最 近は当社にもビジネス型商圏で店舗展開をしていた居酒屋さんなどから 「コロナ禍を機に住宅街型商圏で新しいお店を出店したい」というご相談 が増えてきています。

 直近の大手居酒屋チェーンの売上動向を調べると、住宅街型商圏で地域 密着のお店を展開していた企業は、ビジネス型商圏の居酒屋企業よりコロ ナ禍の影響が少ないケースが多々ありました。

 話をカフェ・喫茶業態に戻します。次は実際に、カフェ・喫茶業態にお いて、ビジネス型商圏ではなく住宅街や郊外を中心に展開しているチェー ン店の業績を見てみます。

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コロナ禍でも利益を獲得できているコメダ珈琲

 皆さんは「コメダ珈琲店」をご存じでしょうか? コメダ珈琲店は1968 年に名古屋市で創業した喫茶店です。運営会社のコメダホールディングス (HD)は全国47都道府県に873店舗を出店している上場企業です。カ フェ・喫茶チェーンにおいては、スターバックスコーヒー、ドトールコー ヒーに次いで3位の店舗数を誇ります。

 そのお店のほとんどが住宅街の生活道路沿いにあります。ビジネス型商圏 のカフェ・喫茶チェーンとは違い、ゆったりしたソファと大きめのテーブル、 フルサービス、デザートから軽食までそろえたフードメニューなどがコメダ 珈琲店の特徴です。ここで早速、コメダHDの業績を見ていきます。

 同社の2020年3月~11月の決算資料を確認すると、全店売上高前年対比 は90.2%となっており、同時期の売上高前年対比が70%程度のビジネス商圏 型カフェ・喫茶チェーンと比べても、大きく健闘している事が分かるかと思います。

 さらに驚くのは利益です。他のビジネス商圏型カフェ・喫茶チェーンが軒 並み赤字決算となる中で、コロナ禍真っただ中の20年3~11月の9カ月間に おいて、コメダHDの営業利益は42億7400万円で、営業利益率は20%を超 えています。コロナ前の20年2月期決算にいたっては、営業利益率は25%を 超えています。これは、カフェ・喫茶チェーンのみならず他の上場飲食業と 比べてもかなり高い利益率になります。

 コメダ珈琲店のビジネスモデルをさらに分かりやすく分析するため、コメ ダHD、スターバックスコーヒー、ドトールコーヒーの損益モデルを比較してみます。

 

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大手カフェ・喫茶チェーン3社のビジネスモデルの比較

 コロナ禍前の3社の損益計算書を比較します。

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 なお、ドトールコーヒーは2007年に日本レストランシステムと経 営統合をしているため、経営統合前のデータを参考値として分析して います。

 この数値を見てまず気付くのは、3社の原価率の違いです。コメダ HDの原価率は61.3%、スターバックスが28.2%、ドトールコーヒー が50.3%となります。この違いはフランチャイズ店舗の割合に起因し ています。店舗の95%以上がフランチャイズ店となるコメダHDは、 加盟店に対する食材の卸売上の占める割合が大きくなるため、全社の 原価率が高くなる傾向にあります。ドトールコーヒーも、フランチャ イズ店舗の割合が70%を超えるため、同じく原価率が高くなる傾向に あります。これだけ見ると、コメダはスターバックスの2倍以上も原価 率をかけており、もうからないビジネスのように感じます。しかし、 売上原価以外の「販売費及び一般管理費の比率」(以下、経費率)を 見ると、そのビジネスモデルの秘密に気付きます。

 3社の経費率を見てみると、コメダHDは13.8%、スターバックス コーヒー62.7%、ドトールコーヒー43.4%となっています。コメダ HDは圧倒的に経費率が低いことが分かります。

 コメダHDの経費率が低い要因は大きく2つあります。1つ目はコメダ珈 琲は郊外やロードサイドに出店しているため、家賃比率が低いということ。 もう1つは店舗のうち95%がフランチャイズ店舗なので、設備投資(減価 償却費)や人件費などの負担が少ないことです。

 このように、経費の中でも特に固定費といわれるようなコストが低い企 業は、コロナ禍のような経営危機で売り上げが減少しても、損益分岐点売 上高が低いため、赤字リスクが低くなる傾向があります。

 コロナ禍によって、今までは成功のセオリーであったようなビジネスモ デルにも変化が生じています。短期的な環境変化に対して自社のビジネス モデルを適応させることが必ずしも良い経営判断とは限りません。しかし、 こういった時期だからこそ、さまざまなビジネスモデルに目を向けること も重要かもしれません。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 皆さまにとって少しでもご参考になれば幸いです。

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