アルバイト出身者が7割超!「トップダウン経営」から脱却し、「自走する組織」を作ったフードクルーズファクトリーの挑戦
(株式会社フードクルーズファクトリー 代表取締役社長 澤邉真一氏)
「昔は僕が口を出してばかりだったが、今は幹部たちが自分で“経営戦略の2の手、3の手”まで考えてくれるようになった」
そう語るのは、東京を中心に居酒屋や専門業態を16店舗展開する株式会社フードクルーズファクトリーの代表澤邉真一氏だ。同社は平成15年(2003年)に創業し、現在従業員約400名、社員55名を抱える。驚くべきは、社員の平均年齢が28歳と若く、正社員のうち約7割にあたる37名がアルバイト出身であることだ。圧倒的なリファラル採用(紹介採用)の強さを持つ同社だが、店舗拡大の過程で「組織の壁」に直面したという。
今回は、28歳で業務用エアコンの営業マンから飲食業界へ飛び込んだ異色の経歴を持つ澤邉代表に、「トップダウン経営」から「自走する組織」へと変革を遂げた軌跡と、人を大切にする独自の業態開発について話を伺った。
■飲食店への憧れから28歳で転職。一般社員から社長へ
(株式会社フードクルーズファクトリー 代表取締役社長 澤邉真一氏)
フードクルーズファクトリーの澤邉代表は、28歳まで業務用エアコンの営業マンをしていたという異色のキャリアを持つ。「飲食店のお客様が多く、働いている人たちを見ていて『僕もそっち側に行きたい』と思ったんです。当時の私から見て飲食業で働く人たちがとてもキラキラして見えました」そこから一般社員として同社に入社し、37歳で取締役に、47歳で代表取締役に就任した。現在、同社は「ディプント」「肉汁とっつぁん」「串あん」「高円寺 動悸(ときめき)」「ほぼ上野 オスシマチ」など、多彩なブランドをフランチャイズと直営の両方で展開している。
■「阿吽の呼吸」が通用しなくなった。マンパワーからシステムパワーへ
アルバイトからの社員登用が多く、絆の強い同社は、長年「阿吽の呼吸」で店舗を運営してきた。しかし、店舗数が15〜16店舗に拡大し、経営陣も年齢を重ねる中で、感覚だけのマネジメントに限界を感じ始めたという。「コロナ禍を経て、この数年で12店舗ほどオープンするなど出店が続きました。人がどんどん入る中で、教育制度が追いつかず、理念やQSC(品質・サービス・清潔さ)の基準がバラバラになってしまったのです」
『家業から企業へ』『マンパワーからシステムパワーへ』の転換が急務となっていた。
■社内メンバーで作り上げた「クレド」が、会議と組織の軸に
(同社のクレドの1ページ)
そこで同社は、社内メンバーで会社の理念やビジョン、行動指針をまとめた「クレドブック」を作成した。「今では、店舗ミーティングやアルバイトリーダーミーティング、店長会議など、すべての会議をこのクレドを中心に行っています」ただ手元に置くだけでなく、考え方や共通言語を統一するためのツールとして徹底的に活用しているのだ。社内メンバーが自らディスカッションし、クレドの内容を決めたことで、組織に大きな変化が生まれた。
■幹部メンバーが参加した「経営計画策定合宿」
(経営計画策定合宿の様子~合宿密着YouTubeより~)
クレドで理念、ビジョン、行動指針を明確化した同社では、次のフェーズとして社長と幹部メンバーで「経営計画策定合宿」を実施。将来の自分たちが目指す店舗数、売上、利益を定めた上で、その目標に到達するために解決すべき経営課題を洗い出し、その解決に向けた具体的な行動を「アクションプラン」にまで落とし込んで、具体的な経営計画書を作成した。クレドの導入と経営計画の策定を経て、幹部たちの意識は劇的に変わった。「以前は僕が口を出してばかりでしたが、今は幹部たちが『こう思うからこうやりたい』と、経営戦略の2の手、3の手まで考えて提案してくれるようになりました。会議でも僕が口を出す場面が減り、端っこに座っているくらいです(笑)」幹部たちが単なる「管理職」ではなく、目標に向けて挑戦する「チャレンジャー」へと変貌し、社長自らが全てを背負うのではなく、チーム全員で会社を前進させる「自走する組織」へと進化したのだ。
■働く人の「ライフステージ」に合わせた業態開発と、店長の待遇向上
(同社店舗「高円寺 動悸(ときめき)」)
今後のビジョンについて伺うと、同社の業態開発の根底にある「人を起点とした経営」が見えてきた。「私たちは流行りだからその業態をやるのではなく、社員の年齢や結婚などのライフステージの変化に合わせて、40代、50代になっても働き続けられる業態を作っています」そして、代表が強く願っているのが「店長の待遇向上」だ。「昔は店長が住宅ローンの審査に落ちてしまうこともありました。だからこそ、店長がしっかりとローンを通せるように、まずは全店長が年収600万円を取れるようにしてあげたい。それが今の私の目標の一つです」
2028年には、売上高20億円、営業利益率10%、20店舗という明確な目標を掲げるフードクルーズファクトリー。属人的な組織から脱却し、共通の理念のもとで一人ひとりが主体的に挑戦する。その強固なチーム力は、これからの飲食業界における新しい組織づくりのモデルとなるだろう。
インタビュアー 三ツ井創太郎
三ツ井創太郎 飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表(社)日本フードビジネス経営協会代表理事。飲食企業で店長、SV、事業統括の経験を経た後、2011年に東証一部上場のコンサル会社である(株)船井総合研究所に入社。飲食コンサルティング部門のリーダーとして数多くの飲食店支援を行う。2016年飲食店特化のコンサルティング会社(株)スリーウェルマネジメントを設立。「飲食店オーナー様に徹底的に親身なサポートを!」を理念に、個人店から大手チェーンまで日本全国の飲食店へ支援を行う傍ら、テレビのコメンテーターや行政、金融機関と一体となった飲食店支援も行う。著書「V字回復を実現する! あたらしい飲食店経営35の繁盛法則 」はアマゾンの外食本ランキングで1位を獲得。