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【人材定着】効果的な賞与制度とは?飲食店経営者が知っておくべき賞与設計のポイント

皆さんこんにちは!飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表の三ツ井です。

前回のブログでは、「公平な評価」と「納得感のある給与」を実現する方法についてお話をさせて頂きました。

前回のブログはこちらからご覧ください。

今回のYouTubeはこちらから!| 飲食店コンサルティングのスリーウェルマネジメント

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評価結果を賞与に反映させる

これまでのブログでは、地方都市で大型和食店などを経営している佐々木社長の会社で実際に評価制度をゼロから作った構築過程をご紹介して参りました。

三ツ井「ここまでは評価結果と昇降給を連動させる方法についてお話ししてきましたが、 ここからは評価結果と賞与との連動について見ていきましょう」

佐々木社長「賞与については、給与評価とはまた別の評価をするのでしょうか?」

三ツ井「私は給与査定で行なった評価結果を、そのまま賞与支給額に連動させることをおすすめしています。なぜかというと、『給与はこの評価制度で、賞与はまた別の評価 制度で… …』となると、制度の運用が煩雑化して、評価制度を継続するのが難しくなってしまうからです」

ここでは、飲食店での効果的な賞与支給の方法について、整理をしながら解説していき ます。

 

■賞与とインセンティブの違い

賞与(ボーナス)とは、労働基準法では「定期または臨時に、原則として従業員の勤務 成績に応じて支給され、その額があらかじめ定められていないもの」とされており、定期給とは別に支払われる給料です。日本の企業では6月下旬から7月下旬に支払われることが多い「夏季賞与」、12月に支払われることが多い「冬季賞与」、会社の決算時点での業績に基づいて支給される「決算賞与」などがあります。

なお、賞与に関しては、年4回以上の支給を行なうと、社会保険上の「報酬」となり、社会保険料にも影響します。

一方で、インセンティブは従業員個人の業績等への貢献に対して対価を与えるもので、支給は必ずしも「金銭」に限らず、表彰などの非金銭的なインセンティブを実施する企業 もあります。最近では、飲食企業においてもKPIを重視する企業が増えており、当社にも「毎月のKPI達成に応じて金銭的インセンティブを支給したい」というご相談があります。

こちらも前述したように、年4回以上の金銭的インセンティブの支給は社会保険料に影 響するため、毎月のKPI達成状況を「インセンティブポイント」として加算し、年3回の賞与支給の枠内で、インセンティブポイントを賞与支給額に追加する運用方法をおすす めしています。

【人材定着】効果的な賞与制度とは?飲食店経営者が知っておくべき賞与設計のポイント

■賞与支給金額の決定方法

賞与の金額を決定する方法は、主に次のようなものがあります。

①基本給連動型賞与

これは「基本給の何カ月分」と定めるもので、例えば夏季賞与1カ月、冬季賞与2カ月、 年間合計3カ月といったものです。これも事業規模や地域、収益性等によって異なるので、一概には「何カ月が適正」とはいえませんが、数多くの飲食企業の状況を見てきた私の見解としては、中小飲食企業で賞与を支給している会社の場合は(実際には長引いたコロナ禍の影響により、賞与を支給できていない飲食企業が多い)、夏季、冬季合計で0.5 カ月から1カ月程度を支給基準としている企業が多いようです。2カ月分を支給していると「多い」、3カ月を支給している企業は「かなり賞与支給条件が良い企業」といってよいかと思います。

②業績連動型賞与

名称通り、業績と連動して支給する賞与です。業績といっても定量的な成果だけではなく、評価制度における個人の評価結果を反映させる場合や、組織単位や所属部署の業績を反映させる場合もあります。

③決算賞与

決算賞与は、決算月の前後に支給される賞与です。業績によって支給の有無や金額が決定するという点では、②業績連動型賞与と近い性質のものですが、大きな違いは、業績連動型賞与は個人の成果等によって支給額が決定しますが、決算賞与は会社の業績によって支給の有無や支給額を決定する点です。

こうした一般的な賞与の概念を踏まえたうえで、佐々木社長と相談しながら賞与支給の基準を決定していきます。

【人材定着】効果的な賞与制度とは?飲食店経営者が知っておくべき賞与設計のポイント

三ツ井「ここまでは一般的な賞与の概要についてお話ししましたが、佐々木社長はどのような賞与支給を考えていきたいですか?」

佐々木社長「まず、支給回数に関しては正直、今までは不定期で会社の決算が10月なので、10月に業績によって支給していました。今後は最低でも年2回は支給をしたいと思います。 支給時期も6月末に夏季賞与、12月に冬季賞与を支給したいです。決算賞与に関しては、会社の業績次第で支給したいですが、まずは夏・冬の賞与支給をベースに考えていきたいと思います」

三ツ井「6月と12月に支給したいという理由は何ですか?」

佐々木社長「これは以前から感じていたことなのですが、毎年6月、12月になると、テレ ビで一般企業の夏季・冬季賞与に関するニュースが数多く流れます。うちのスタッフもこうしたニュースを見るたびに『うちの会社は賞与出ないのかな~?』と考えていると思うのです。この想いはスタッフの家族も同様かと思います。そういった意味では、これからは周りの一般企業と同じ時期に賞与支給をしてあげたいですね」

三ツ井「確かに最近の賃上げムードの中で、夏季・冬季賞与が以前より増えたといった報道を数多く目にするようになりました。実際に当社の支援先では、優秀なスタッフが『毎年夏と冬のボーナス時期に、奥さんから賞与がないことをチクチク言われて、 夏・冬の賞与支給がある他の飲食企業に転職してしまった』という事例がありまし た。そうした意味でも、一般企業と同じ月に賞与を支給することは、定着率を高めるうえでも有効だと思います。支給の基準についてはどうですか?」

佐々木社長「やはり、スタッフのモチベーションを高めるうえでは、個人評価結果を反映させた業績連動型賞与を考えていますが、本音を言うと原資(キャッシュ)がないと支給できないので、支給額が見通しやすい基本給連動型賞与もいいかなと思っています」

三ツ井「わかりました。それでは基本給連動型賞与と業績連動型賞与、それぞれの良いところを反映させた支給ルールをつくりましょう!」

今回は佐々木社長のご意向を聞いたうえで、「基本給連動型賞与」と「業績連動型賞与」 をかけ合わせた「基本給&業績連動型賞与」支給の制度を構築しました。 基本給&業績連動型賞与支給のステップは、次の通りです。

【人材定着】効果的な賞与制度とは?飲食店経営者が知っておくべき賞与設計のポイント

【基本給&業績連動型賞与支給のステップ】

①年間賞与支給総額目標を決定する

まずはじめに、会社として年間に支給する賞与の支給総額(原資)の目標を決定します。 佐々木社長の意向としては、まずは夏・冬合計で1.25カ月分を支給したいということでした。夏と冬の配分に関しては、夏が0.5カ月、冬を0.75カ月という支給基準にすることに決まりました。

②支給基準に評価結果を反映させる

これに関しては、さまざまな反映のさせ方があります。

⑴相対評価賞与支給方式

あらかじめ会社側で、賞与の支給総額に対して、評価結果の上位順にAランクが3名、Bランクが5名、Cランクが5名といったように枠を設け、この枠に応じて支給額を決めていく方法です。評価ランクによっての支給額の差がつけやすく、「高評価の人に多くの賞与を支給したい」という企業には有効な支給方法です。

⑵評価結果達成率支給方式

基本給に評価結果(達成率)をかけ合わせて、賞与を算出する方法です。算出した支給基準額の合計に支給調整率をかけて合わせて、賞与支給合計額(原資)の総額と同等となるように調整します。

この方法だと、「月給× ○カ月」といった年間賞与支給総額と個人評価結果、両方の要素を盛り込んだ賞与支給額にすることが可能です。一方で、あくまでも給与を賞与支給額ベースとしているため、評価結果の優越による賞与金額の差は少なくなるという側面もあります。

【人材定着】効果的な賞与制度とは?飲食店経営者が知っておくべき賞与設計のポイント

佐々木社長「確かに相対評価賞与支給方式は、頑張った社員に多くの賞与を支給できるといった意味でいいかもしれませんね。ただ、私としては店舗や会社はチーム力が大切だと感じていますので、あまり個人成績で賞与に差をつけすぎるのは、少し抵抗があります。 また、今年は評価結果が良く、たくさん賞与が支給されたとしても、来年はどうなるかわからないという不安もあると思いますので、給与をベースとしていて、あ る程度の賞与が見通せる評価結果達成率支給方式がいいかと思います」

今回、佐々木社長の会社では、月給ベースと評価結果を組み合わせた評価結果達成率支 給方式を採用されましたが、どのような賞与支給基準を採用するのかは、企業の文化や目指すべき組織の方向性によって変わります。

当社の支援先の中には、賞与支給基準はKPIの達成状況だけを見て決定するという企業もありますし、業績(定量評価)のみを考慮して支給する企業もあります。大切なのは、 その企業にとって最良な支給基準を考え、構築・見直しを継続的に行なっていくことなのです。

 

なお、今回のブログは下記YouTubeでも解説しておりますので、ぜひご覧ください!

本ブログが少しでも飲食店経営者の皆様のご参考になれば幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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