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コロナ禍でも絶好調!マクドナルドの4つの投資戦略

コロナ禍でも絶好調!マクドナルドの4つの投資戦略

 皆さんこんにちは、飲食店コンサルティング会社 株式会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

 今回は2021年8月に第2四半期決算発表(2021年1月~2021年6月実績)を控える、日本マクドナルドホールディングス株式会社の業績や取り組みについて見ていきたいと思います。

コロナ禍でも絶好調!マクドナルドの4つの投資戦略

(写真提供:ゲッティイメージズ)

マクドナルドの2021年12月期第2四半期(2021年1月~6月)業績

マクドナルドの2021年12月期第2四半期(2021年1月~6月)業績

 マクドナルドの2021年1月~6月の全店合計売上高は前年対比110.2%でした。さらに既存店の業績を細かく見てみると売上高は前年対比109.3%、客数は前年対比105.8%、客単価前年対比103.4%と全店、既存店、客数、客単価全ての指標において前年を上回っている事が分かります。「昨年はコロナ禍で売上が低迷したから、今期は前年比を上回っているのでは?」と思われる方もおられるかもしれませんが、実はマクドナルドの既存店売上高は2015年第4四半期から2021年第1四半期まで22四半期連続でのプラスとなっています。

 一方で利益面はどうでしょうか?こちらに関しては、既に発表されている2021年12月期第1四半期決算(2021年1月~3月)の実績を確認していきます。

 

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 マクドナルドの2021年1月~3月の経常利益は約91億円と前年の72億円を大きく上回る結果となりました。利益増加要因は何といっても売上高の増加です。

 一方、マクドナルドの店舗がコロナ禍の影響を全く受けていないかと言うと実はそんな事はありません。コロナ禍に伴う店舗の営業時間の短縮やソーシャルディスタンスによる稼働席数の減少などにより、店内飲食売上は前年比で減少しています。しかしながら、テイクアウト、ドライブスルー、デリバリー等の店外売上が大きく増加し、業績好調をけん引しています。

 緊急事態宣言の延長など、日本全国の飲食業界がまだまだ厳しい状況になる中で、マクドナルドの好業績の裏側にはどういった取り組みがあるのか?次は同社が掲げる4つの戦略を分析していきます。

 

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コロナ禍に掲げる4つの戦略「ピープル」「メニュー・バリュー」「店舗展開」 「デジタル・デリバリー・ドライブスルー」とは

①人材への積極投資を行う「ピープル」戦略

 コロナ禍におけるマクドナルドの業績に大きく寄与したデリバリー&ドライブスルー。こうした店外売上の付加は店舗にとってメリットがある反面、実はデメリットもあります。

 コロナ禍直後にはマクドナルドに限らず多くの飲食店がデリバリーやテイクアウトといった店外売上獲得にチャレンジしました、しかし、コロナ禍発生から1年以上が経過した今でも上手に店外売上を獲得できているお店は少ないのが実情です。この要因の一つに「オペ―レーション負荷」の課題があります。

 具体的なお話をすると、店外売上の注文が集中する時間帯は、店内売上のピークタイムと重なる場合が多く、店内、店外両方において集中するオーダーをアルバイトスタッフを中心にこなしていくのは、かなり大変なオペレーションとなります。

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マクドナルドのクルーは全国に約17万人いる(出所:マクドナルド公式Webサイト)

 皆さんは全国のマクドナルドには何名のクルー(アルバイト)がいるかご存知でしょうか?全国のクルーの人数は17万人を超えます。この17万人のクルーに対して、急増する店外オーダーに対応するオペレーションを満遍なく教育していく事がどれほど大変な事かは、皆さんも想像ができると思います。

 こうした中でマクドナルドでは、新たなオペレーション等をいち早く全店レベルに落とし込む為に、タブレット型のトレーニング教材である「デジタルCDP」等を開発しオペレーション教育を推進してきました。さらに最近ではスタッフの多国籍化に対応するべく英語、ベトナム語、ネパール語、ポルトガル語、中国語の5か国語にも対応できるよう機能を強化しています。

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マクドナルドのトレーニングツール(出所:日本マクドナルド2020年第2四半期決算発表資料)

 同時にマクドナルドの教育施設である「ハンバーガー大学」もコロナ禍直後に、いち早くオンライン化に切り替えられており、こちらは2021年1月~3月で既に5,920人が受講しています。

 マクドナルドでは、こうしたコロナ禍に伴う新たな店舗運営形態(ニューノーマル)に対応する為の人材採用・教育面への投資を積極的に行っています。その証拠に2020年12月決算を細かく分析していくと、労務関連費率は28.9%とコロナ禍前より1.4%、金額にして約26億円上昇しています。

 

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②幅広いターゲット層を獲得する「メニュー・バリュー」戦略

 マクドナルドの強さの一つにメニュー戦略があります。マクドナルドではハンバーガー、デザート、ドリンク等を合わせると年間で100アイテム以上の期間限定メニュー等をリリースしています。またこの100アイテムの期間限定メニューは、決してやみくもに開発されている訳では無く、獲得したいターゲット層を明確に定めた上で、綿密に開発企画が練られているのです。

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マクドナルドの商品ラインアップの一部(出所:日本マクドナルド2020年通期決算発表資料)

 最近の期間限定メニューを例にとると、マクドナルドの中では高価格帯に分類される490円価格帯に肉厚のパテを使用した「サムライマック」などのグルメ系ハンバーガーを投入する一方で、100円、150円、200円というラインナップで数種類のハンバーガーが選べる「ちょいマック」や、平日のランチタイム限定の400円からの「バリューランチ」を展開する等、低価格帯と高価格帯の両方において同時にキャンペーンを打ち出す事で、幅広い客層を獲得する事に成功しています。

 また子供向けメニューである「ハッピーセット」のサイドメニューにおいては、フライドポテトに加えて、えだまめコーン、ヨーグルト、サイドサラダ等を追加する事で「子供の健康を気にする母親層」からの支持を得る事にも成功しています。

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社会貢献活動などにも積極的(出所:日本マクドナルド2020年通期決算発表資料)

 その他にも、フィレオフィッシュに使う魚に関して、持続可能な漁業で獲られた水産物に認められる「MSC認証」を取得した「天然アラスカ産スケソウダラ」を使用したり、提供するコーヒーに関して森林や生態系を守り、労働者に適切な労働条件を提供する「レインフォレスト・アライアンス認証」を取得した農園が栽培するコーヒー豆の100%使用や、ハッピーセットのおもちゃリサイクルなど、環境等に配慮した企画の導入にも力を入れており、こうした取り組みが従来のマクドナルドには来店していなかった「健康や環境意識の高い消費者層」の新規獲得に大きく寄与しています。

 

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③立地特性を踏まえた積極的な「店舗展開」戦略

 マクドナルドの現在の店舗数は2,921店舗(2021年3月末時点)となっています。マクドナルドでは店舗展開や店舗への投資に関して、立地特性等を踏まえて大きく4つの戦略を打ち出しています。

<マクドナルドが打ち出す4つの店舗投資戦略>

(1)新店:新たな場所で新たな店舗を出店

(2)リロケート:近隣のより良い立地に移転する

(3)リビルド:同じ場所で建て替えを行う

(4)改装:既存店舗を改装する

 ここで同社の2020年の店舗投資実績と2021年の店舗投資計画を見ていきます。

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 2020年は144店舗の新店、リロケート、リビルド、改装を行っています。2021年は2020年を上回る170店舗以上に対しての店舗投資を計画しており、その50%以上がデリバリーやドライブスルー等への対応強化も含めた「改装計画」となっています。2020年においては、コロナ禍の中でもこうした積極的な店舗投資を行った結果、コロナ禍前に比べて減価償却費が約7億円増加しています。

 

④次世代を見据えた「デジタル」「デリバリー」「ドライブスルー」への投資

 デジタル強化においては、マクドナルドでは昨年のコロナ禍発生直後の2020年3月23日の公式アプリアップデートにおいて「モバイルオーダー」機能をいち早く搭載する等、積極的かつスピーディーなデジタルシステム開発を行ってきました。

 筆者も実際にマクドナルドの公式アプリ使ってみました。

 「オーダー」というボタンが設置されており、そのボタンを押すと自分が今いる近くのマクドナルド店舗が自動表示されます。このようなユーザー個人の情報等を踏まえた「パーソナライズドマーケティング」にも力を入れています。

 筆者の世代の人は、マクドナルドと言えば、点線でちぎって使う紙のクーポンを連想すると思いますが、アプリには「クーポン」ページもあり、時間帯別の様々なクーポンをデジタル上で見る事ができます。

 

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 マクドナルドでは今後も決済方法の拡充を始めとしたさらなる機能強化 を行い利便性を高める事で、既に累計6,600万ダウンロードを超えている アプリユーザーをさらに増やしていく計画を立てています。

 デリバリーに関しては、マクドナルドのスタッフが直接届ける「マック デリバリーサービス(MDS)」だけでは無く外部委託業者との提携を進 める事でデリバリー対応店舗を急激に増加させており、2021年3月末時 点で、デリバリー実施店舗数は「MDS756店舗」「Uber Eats1,383店 舗」「出前館1,062店舗」「Wolt116店舗」と全店合計で1,629店舗と なっています。外部業者との連携は売上シェア拡大をする上では非常に重要な戦略ですが、一方で手数料増加というデメリットもあります。実際に マクドナルドの2020年度のデリバリーや外部委託業者への手数料等の支払いは額年間12億円にもなっています。

 しかし、デリバリー市場は今後も成長が望める市場である事は間違いな く、同社としても47全都道府県でのデリバリー導入を目標にさらなる投資 を行っていく方針を打ち出しています。

 ドライブスルーについては、リロケートやリビルド、改装等によりリ キャパシティを増強するほか、「モバイルオーダー」でご注文した商品を 車に乗ったまま店舗の駐車場で受け取れる「パーク&ゴー」の拡大を行っており、2021年3月末時点で全国の860店舗が対応しています。

 コロナ禍という未曽有の状況の中でも「人材」「メニュー」「店舗」 「デジタル」に積極的な投資を行うマクドナルド。2020年決算において は人材と店舗に対してコロナ禍前の2019年度対比で58億円もの投資を 行っています。しかしその投資等の効果として売上高はコロナ禍前の 2019年対比で78億円の増加とりなり、最終利益は2019年の280億円に対して、2020年は312億円と約32億円増加させる事に成功しています。

 時代の先を読んだ攻めの投資戦略が同社の好調を支えているのです。

 最後までお読み頂きありがとうございました。

 少しでもご参考になれば幸いです。

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